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東京地方裁判所 平成4年(行ウ)109号 判決

原告

栗原孝幸

右訴訟代理人弁護士

山口広

海渡雄一

被告

警視総監 吉野準

右訴訟代理人弁護士

山下卯吉

福田恆二

新井弘治

右指定代理人

諸星利朗

島田幸治

被告

東京都

右代表者知事

鈴木俊一

右指定代理人

金岡昭

鈴木朗

鈴木健一

山崎裕之

事実及び理由

第三 争点に対する判断

一  本件処分の取消しの訴えの訴えの利益(争点1)について

1  本件処分による自動車運転免許の効力停止期間が既に経過していることは当裁判所に顕著な事実であり、本件処分自体の効力が既になくなっていることは明らかである。そして、〔証拠略〕によれば、原告が、本件処分後、一年を経過した後である平成五年三月一一日までの間、無違反・無処分の状態で経過したことが認められる。そうすると、原告は、道交法施行令別表第二の備考の定める者に該当することになるから、同月八日以降、本件処分は原告の処分前歴として取り扱われることはなく、原告は、今後、本件処分を理由として、道交法上不利益な取扱いを受けることもなくなったというべきであって、他に本件処分を理由に原告を不利益に取り扱い得ることを認めた法令の規定も存しない。したがって、行政事件訴訟第九条の規定の適用上、原告は、本件処分の取消しにより回復すべき法律上の利益を有しないというべきである。

2  これに対し、原告は、右法律上の利益とは、裁判上保護するに値する利益である限り、事実上の利益であっても足りる旨主張するが、行政事件訴訟法九条が明確に法律上の利益と規定していること、行政処分の法的効果としての不利益でないような事実上の不利益についてまで、あえて行政処分の取消訴訟によらなければならない必要性もないと考えられること等からすれば、原告の右主張は採用できないというべきである。

また、原告は、本件処分が取り消されない限り、本件違反行為の存在が後に免許の取消し、停止等の行政処分を行う際の行政裁量の基礎事実とされるから、本件処分の取消しにより回復すべき法律上の利益がある旨主張する。しかしながら、道交法一〇三条二項は、免許の取消し、停止に関しては政令で定める基準に従って行う旨定めており、道交法施行令三八条は、その基準として、違反行為に係る累積点数によることとして別表第二を定めているところ、同表の備考は、同表に規定する前歴とは、累積点数に係る当該違反行為をした日を起算日とする過去三年以内の処分歴等をいうが、無違反・無処分で一年を経過した者については一年の期間前における事由は含まない旨規定して、右期間前の違反行為や行政処分は、その後に免許の取消し、停止の行政処分を行うに当たっては法律上これを考慮しない旨を定めているものと解される。そうすると、原告が主張する右不利益は、単なる事実上のものにすぎず、したがって、原告に本件処分の取消しにより回復すべき法律上の利益が存するとはいえないというべきである。

さらに、原告は、三年間の無事故無違反には、免許更新の際の簡易講習等の特典がある旨主張するが、〔証拠略〕によれば、原告は、本件処分後、既に免許更新を受けており、また、本件処分前の平成三年五月九日ころに酒気帯び運転違反をしていることが認められ、本件処分の有無に関係なく、右免許更新の際には、原告の主張するような特典を受けることができなかったものであり、今後の免許更新の際にそのような特典を受けることができるか否かも、本件処分の有に関係がないのであるから、そうした特典の享受が法律上の利益に当たるか否かを判断するまでもなく、原告の主張は理由がないというべきである。

3  以上のとおり、原告の主張はいずれも理由がなく、原告には本件処分の取消しを求めるにつき法律上の利益がないというべきであるから、右訴えは不適法なものといわざるを得ない。

二  本件違反行為の有無(争点2及び3)について

1  前記争いのない事実に加え、〔証拠略〕によれば、以下の事実が認められる。

本件取締当日の午前九時四五分ころから午前一一時四五分ころまでの間、青梅署員らは本件取締現場において、速度違反車両の取締りを実施していたが、その取締りの方法は、測定場所にレーダー式の本件測定装置を設置して(本件測定装置は、レーダー波を送受信するアンテナ部、速度表示装置及び速度表示記録装置からなり、アンテナ部及び速度表示装置は測定場所に置かれ、速度表示記録装置は速度表示装置と有線でつながれ取締場所にいる記録確認係のもとに置かれていた。)、測定場所にいる測定現認係が、新宿方面から走行してくる車両のうち、目測により速度違反をしていると認められた車両について、本件測定装置により速度を測定し、速度違反が確認できた時には、測定場所から約一六〇メートル奥多摩寄りの取締場所に配置されている記録確認係、停止係等の各係員に速度違反車両の情報を通報し、取締場所の係員が、当該車両を停止させ、取調べ等を行うというものであった。右通報は、測定現認係と記録確認係との間で有線マイクを用いて行われるが、取締場所にはスピーカーが設置され、測定現認係と記録確認係の通話内容が、停止係等にも聞こえるようになっていた。なお、本件測定装置は、取締速度を設定できる機能を有しているところ、本件取締当日においては、指定速度を二〇キロメートル毎時以上超過している車両を取り締まる予定で、本件測定装置の設定速度は六〇キロメートル毎時とされており、走行中の車両が本件測定装置の斜め前方に照射されているレーダービーム内を通過する際に、そのスイッチを押すと、右設定速度以上の速度で走行している場合には、ブザーが鳴り、速度表示装置に速度が表示され、速度表示記録装置から、測定時分、測定速度が印字された測定記録紙が出てくる仕組みになっていた。

本件取締当日、取締りに当たっていた青梅署員は七名であり、測定場所には、測定現認係である小林巡査長が、取締場所には、現場責任者である手塚警部、停止係である林警部補、停止係兼追跡係である笹島巡査、記録確認係である下村啓介巡査、取調係である原嶋巡査部長、櫻庭(当時)久美巡査が配置されていた。小林巡査長は、昭和六三年にレーダー式測定装置を取り扱うために必要な特殊無線技師の資格を取って以来、測定現認係を担当しており、笹島巡査は、白バイ乗務員として四年くらいの経験を有していた。

以上の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

2(一)  そして、右取締時の状況について、小林証言には、次のような証言部分がある。

本件取締当日の午前一〇時五〇分ころ、小林巡査長は、新宿方面から一人乗り自動二輪車が走行してくるのを発見し、その後方約五〇メートルから一人乗り自動二輪車を追い上げてくる二人乗りの自動二輪車(以下「本件速度違反車」という。)を発見した。小林巡査長は、本件速度違反車の速度が一見して設定速度を超過していると認めたので、本件速度違反車が測定場所のレーダービームが照射されている地点に達するところで、本件測定装置のスイッチを押したところ、ブザーが鳴り、速度表示器に八〇キロメートル毎時が表示された。小林巡査長は、本件測定装置のブザーが鳴った後、本件速度違反車を注視し、その特徴は、二人乗りの黒色のアメリカンタイプの大型バイクで、登録番号の末尾ナンバーは一九一九であり、乗車している二名のヘルメットがいずれも黒色であることを確認した。そして、停止場所にいる記録確認係等に「一九一九、二人乗り、追い上げバイク、停止」と通報したが、その際、記録確認係から「アメリカンタイプですね。」との確認があり、小林巡査長は「そのとおり。」と答えた。

(二)  また、笹島証言には、次のような証言部分がある。

取締場所のスピーカーから発信音があり、測定現認係から「一九一九、追い上げ、二人乗りバイク、停止」という連絡があり、記録確認係が測定現認係に、「アメリカンタイプですか。」と確認したところ、「そのとおり。」との返答があったので、笹島巡査は、手塚警部及び林警部補とともに歩道上に出て、新宿方面を見ると、一人乗りのバイクと二人乗りのバイクが走ってくるのが見えたので、二人乗りのバイクが通報のあった違反車両であると判断し、停止旗を振るなどして停止合図をした。しかしながら、右車両は、停止することなく取締場所を通過したので、笹島巡査は直ちに追跡を開始し、本件停止地点で原告車を停止させた。

3 ところで、前記1のとおり、小林巡査長は、昭和六三年に特殊無線技師の免許を取得して以来、交通課における速度違反取締りにおいては、測定現認係として、測定装置の操作を担当している者であること、小林証言中には、本件速度違反車の速度の測定の際には、先行する一人乗り自動二輪車が測定地点を通過した後、本件速度違反車がレーダーのビーム内を通過する際に測定している旨の証言部分があり、これを疑わせるような証拠はないことからすれば、小林巡査長がその速度を測定した車両は、本件速度違反車であることが認められ、〔証拠略〕によれば、速度表示記録装置から自動的に印字される当該車両の速度が八〇キロメートル毎時であることが認められる。

そして、小林証言及び笹島証言による本件速度違反車の特徴についての証言部分は、ほぼ一致しており、また、〔証拠略〕によれば、本件取締当日に作成された道路交通法違反事件捜査報告書(以下「本件捜査報告書」という。)に記載された測定現認係から停止係への通報状況及び記録確認係からの通報要旨も右各証言とほぼ同様のものであること、速度測定記録(メモ)(以下「本件記録メモ」という。)のうち、「ナンバー」欄、「特徴」欄及び「状況」欄は、測定現認係からの通報後すぐに記載されるものであるところ、右各欄には、右各証言とほぼ同内容の記載がされていることが認められる。そうすると、本件速度違反車の特徴についての右各証言部分、とりわけ、右車両の末尾ナンバーが「一九一九」であるとの点は、信用できるというべきである。

そして、原告車の登録番号が品川の一九一九号であること、原告車は、本件速度違反車が測定場所を通過したころに二人乗りの状態で本件取締現場を通過したことに照らせば、本件速度違反車は原告車であったものというべきである。

4(一) この点に関し、原告は、本件取締現場を通過する際には三台の自動二輪車が連なって走行しており、原告車はその真ん中にいたもので、測定場所通過時の速度は原告車の速度計を確認したところ五〇キロメートル毎時くらいであり、八〇キロメートル毎時もの速度は出していない旨主張し、原告本人尋問の結果中、甲一号証及び一〇号証にはこれにそう供述部分及び記載部分がある。

しかしながら、原告車の速度の点については、原告本人尋問の結果をみても、原告が原告車の速度計を確認した地点についての供述部分は曖昧であること、また、〔証拠略〕によれば、本件取締当日に作成された原告の供述調書においては、測定場所通過時の速度が五〇キロメートル毎時であった等の具体的な速度の主張は何ら記載されておらず、原告もこのような主張をしていなかったことが認められること、弁論の全趣旨によれば、本件違反有為に関する聴問の際に原告が弁明した速度は五〇キロメートル毎時ではなかったことがうかがわれること等に照らせば、右供述部分及び記載部分は直ちに信用し難いといわざるを得ない。

また、三台の自動二輪車が連なって走行していたとの点について、原告本人尋問の結果中には、本件取締現場を通過する際には、三台の自動二輪車が約一〇メートル程度の間隔の中で走っており、原告車はその真ん中を走っていた旨の供述部分があるが、仮に原告主張の五〇キロメートル毎時程度の速度で走行していたことを前提としても、各車の車間距離が五メートル前後というのは異常に接近した距離というべきであり、そのうちの一台の速度を測定すること自体が困難ともいえる距離であるところ、原告は三台が一緒に走っていたことについては、当初より主張しているが、右のような極めて接近した車間距離であったことについては、本訴に至まで特段主張していなかったこと、また、原告車の後ろを走っていたとする車両については、原告本人尋問中において、原告車が停止させられた後、原告車の脇を抜いてそのまま先に走行していった旨述べているが、そのように極めて接近して走っていたという車両が、同行していた原告車が停止させられた際に、特に停止することもなく通過していくということはやや不自然な点があること等に照らせば、仮に、原告車が他の二台の自動二輪車と一緒に走行していたことがあったとしても、本件取締現場を通過する際に、前記のような極めて接近した状況で走行していたとの右供述部分は直ちには信用し難いといわざるを得ない。

(二) また、原告は、小林証言及び笹島証言等が信用できない理由を以下のように種々主張するので、この点について検討する。

(1) 原告は、原告車が停止させられて取締場所に戻った後、青梅署員らが原告車のナンバープレートを確認して書類等に書き込んでいたことをもって、本件速度違反車の末尾ナンバーが確認されていたことに疑義がある旨主張するかのようである。しかしながら、小林証言及び本件捜査報告書の「記録確認係の捜査経過」欄の記載によれば、記録確認係は、取締場所に原告車が戻った後に、同車の完全ナンバーを確認して、本件記録メモの備考欄及び測定記録紙の測定車両欄に記載したものであり、本件記録メモには、「ナンバー」欄に末尾ナンバーが記載されているとともに、「備考」欄に、原告車の完全ナンバーが記載されていることからすれば、原告車が取締場所に戻った後にナンバープレートの確認がなされたことをもって、本件速度違反車の末尾ナンバーの確認の点が疑わしいということはできない。

(2) 原告は、原告車が停止した後の笹島巡査及び小林巡査長らの対応の際に、本件速度違反車の特徴等、とりわけ、末尾ナンバーを確認していることを原告に説明していない点において、右各証言には不自然である旨主張する。しかしながら、速度違反をしたこと自体を強く否定している原告に対して、その末尾ナンバー等が確認されていることに言及して説得しても効果がないと判断して、その点にあえて言及しないということは、その当否はともかく、十分あり得ることであり、この点をもって、直ちに右各証言等が不自然であるということはできない。さらに、原告は、原告車が停止した後の笹島巡査の対応はいかにも違反車両の特定に自信のない様子であった旨主張するが、右は、原告主張の事実関係に基づく主張であり、速度違反の取締りを行っている警察官が、原告主張のように違反車両の特定に自信のないことを、あえて態度に表すこと自体も不自然というべきであり、右主張は採用できないというべきである。

(3) 原告は、小林巡査長は、速度違反を知らせるブザーがなった後、すぐに報告したと証言している点を捉えて、小林巡査長が本件測定装置のボタンを押したのは、本件速度違反車が測定場所を通過する前であり、ブザーは瞬時に鳴るのであるから、その時点では車両後部にしかナンバープレートがない自動二輪車のナンバーは確認できず、本件速度違反車の特徴についての通報を、まず、末尾ナンバーからしたとする点において不自然である旨主張する。しかしながら、本件測定装置のブザーが、レーザーアンテナが置かれている地点から斜め前方に向けて照射されているレーダービーム内を本件速度違反車が通過した際に瞬時に鳴るとしても、ブザーが鳴った瞬間に通報を行っているわけではなく、小林証言によれば、ブザーが鳴ってから、本件速度違反車が注視して、その特徴を通報したというのであり、また、違反車両の特定としては末尾ナンバーが最も確実であることから、末尾ナンバーから通報したというのであるから、この点に不自然な点はないというべきである。

(4) 原告は、小林証言中には、本件速度違反車は、測定現認係の存在に気がついていなかったようだとの証言部分があるが、右部分は、本件捜査報告書の測定時及び測定後の走行状況欄の記述と矛盾する旨主張する。確かに、右欄には、原告車が測定後ブレーキをかけた旨の記載があるが、小林証言によれば、原告車は測定後ブレーキをかけたが、小林巡査長に気づいてブレーキをかけたのか、気づいていないのかは分からないというのであり、この点をもって、小林証言が不自然であるということはできない。

(5) なお、原告は、小林巡査長も笹島巡査も、原告車に先行していた自動二輪車の運転者が女性であったことを知らず、原告車の後方の自動二輪車にも気づいていない点で、小林証言及び笹島証言が不自然である旨主張するが、右主張は、原告主張の事実関係を前提とするものであり、これをもって、直ちに右各証言が不自然であるということはできない。

(6) また、原告は、原告車の追跡の経緯等に関する笹島証言には、信用できない部分が多数ある旨主張する。

まず、原告は、笹島証言によれば、原告車が通過した後、白バイをスタートさせるまで四、五秒くらいしかなく、七〇ないし八〇キロメートル毎時程度の速度の原告車を追ったといいながら、取締場所から三〇〇メートル程度しか離れていない日向和田交差点の手前で原告車を発見した時点で、原告車と白バイとの距離は一五〇メートルくらいであったというが、そのようなことはあり得ない旨主張する。しかしながら、右四、五秒というのは、得に時間を計るなどとした上での証言はなく、多分に感覚的なものであり、原告車が目の前を通過したぐらいから追跡を開始したとはいうものの、厳密に右車両が取締場所を通過した瞬間から四、五秒しか経過していないというわけではないと考えられること、追跡を開始した時点で直ちに七〇ないし八〇キロメートル毎時の速度になるわけではないこと等に照らせば、笹島証言の右証言部分にやや正確を欠く部分があるとしてもこれをもって、笹島証言全体が信用できないということはできない。

次に、原告は、笹島証言によれば、原告車の追跡を開始した時点で、いったん原告車を見失い、日向和田交差点手前で発見したというが、取締場所から日向和田交差点までの間に、カーブや坂道は存在せず、右証言部分は不自然である旨主張する。しかしながら、〔証拠略〕によれば、取締場所から日向和田交差点に向かう道路が一部坂道になっていることは明らかであり、笹島証言によれば、右坂道のために原告車が見えなかったというのであるから、右証言部分が不自然であるということはできない。

また、原告は、笹島証言によれば、約四〇キロメートル毎時程度の速度で走行している原告車を二キロメートル近くも追跡してようやく停止させたことになるが、そのような態様は速度違反車両の追跡として極めて不自然である旨主張する。しかしながら、笹島証言によれば、片側一車線の道路で原告車と白バイとの間の白色乗用車を安全に追い越せる機会を待っていたというのであり、追跡を開始した時点では事故の可能性等を考慮してサイレンを鳴らしていないこと等に照らせば、違反車両が特段積極的な逃走のそぶりをみせておらず、また、違反車両を確認できる状況で追尾する場合にそのような安全上の配慮から慎重に追跡するということはあり得ないことではないから、この点をもって、笹島証言が信用できないとはいえない。

さらに、原告は、原告車が停止させられた地点は、取締場所から約二・五キロメートルくらい離れた青梅市二俣尾四丁目であるが、笹島証言においては右地点と異なる本件停止地点を停止地点としていることをもって、笹島証言は信用できない旨主張する。しかしながら、右は原告主張の事実関係を前提とするものであり、笹島証言においては、右停止地点を写真等によっても現場の看板等の具体的な目印により即座に指摘しており、右証言自体が不自然であるとか、証言全体が信用できないとまではいえない。確かに、〔証拠略〕によれば、本件捜査報告書に記載された右停止地点の番地は後に訂正されていることが認められるが、右は地図上で番地を確認する際に近接した番地と見誤ったというのであり、これをもって、直ちに原告が主張する停止地点が真実の停止地点であり、笹島証言における停止地点が誤っているということはできないし、笹島証言自体の信用性がないということもできないというべきである。

(7) 原告は、原告の供述調書〔証拠略〕の記載内容に原告主張事実にそった部分があることは、本件取締現場において、客観的事実を示して原告を説得できなかったことの証左である旨主張する。しかしながら、供述調書は、本来供述者の供述を忠実に記載すべきものであり、右供述調書に被告らが主張する事実と異なる事実が記載されていることをもって、被告らの主張する事実が信用できないとはいえないことは明らかである。

また、原告は、本件調査報告書には、記載されるべきことが記載されていないとか、その距離等の記載において、小林証言や乙五号証との間で相違する部分があるなどと主張する。しかしながら、原告主張の点をもって、本件捜査報告書が、後日作成し直されたものであるとか、その測定現認係から停止係への通報状況に関する記載自体が事実に基づかずに記載されたものであるということはできず、これをもって、右記載部分並びに小林証言及び笹島証言全体の信用性に疑義があるということはできない。

(三)  そして、以上のような原告主張の諸点を全体として勘案しても、小林証言及び笹島証言等の本件速度違反車の特徴に関する証言部分及び記載部分の信用性、とりわけ、本件速度違反車の末尾ナンバーの確認の点に関する証言部分及び記載部分の信用性を覆すに足りるような点は認められないというべきである。

5  以上のとおり、小林証言及び笹島証言に反する原告本人尋問の結果中の供述部分等は、直ちに信用し難く、他に前記認定を覆すに足りる証拠はないというべきである。

そうであるとすれば、原告が本件違反行為をしていないのとは未だ認められず、原告が本件違反行為をしていないことを前提とする被告東京都に対する損害賠償請求は、その余の点を判断するまでもなく理由がないというべきである。

三  よって、原告の被告警視総監に対する訴えは、訴えの利益を欠く不適法な訴えであるから、これを却下することとし、被告東京都に対する請求は理由がないから、これを棄却することとする。

(裁判長裁判官 秋山壽延 裁判官 竹田光広 森田浩美)

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